2013年12月20日

マミちゃんのクリスマス(書き込み寺第24回参加企画)

マミちゃんのクリスマス (「マミちゃんの不思議な日常」より)  

12月となると、あちらこちらでクリスマスの話題でもちきりになる。
麻美の通う中学校でも、クラス内では、
「クリスマスはどう過ごすの?」
「私は、家族でケーキやみかんを食べたりして過ごすかな」
「これって、なんだか【家族の絆】を感じるね。あたしはカレシと一緒に街ブラよ!」
「いいな〜!私も早くカレシ欲しいな〜!」
と、早くも友人同士でクリスマス当日のプランなどを教えあっていた。
そう言う同級生の会話を耳にした麻美は、
(そうか、もうすぐクリスマスね)
そう思いながら、ふと考えてみると、さっき会話で同級生が話していたように、クリスマスの日は、夕飯の時に家族でケーキやローストチキンを食べて終わりだった。
(私って、クラスの男友達もいないし、一緒にワイワイ出来るような親友も少ないから……)
しかし、今年の麻美は今までとは違っている。
なにしろ、同級生にはない「動物や物と話を出来る力」を持っているのだから!
今思えば、【出雲の八百万の神々】から特別な力を授かってからは、毎日が楽しいものになった。
家に帰れば、ペットでもあり親友でもあり、はたまた相棒で人生の指南役でもあるハムスターのチャッピーが私の帰宅を待っている。
更に町に出ると、公園にはチャッピーの仲間の鳩さんや地域の守り神様である鶏さんもいる。そして近所には私と同じ様に動物と話が出来る小学生の男の子、ヒカル君もいる。
そしてなりより、私の身の回りの商品のいくつかが私の仲間や話し相手になってる。
(これだけ仲間がいれば、きっと今年のクリスマスは楽しいものになるだろうね)
麻美は思った。

12月中旬のある日の放課後、学校と自宅の間にある公園を通ると、ヒカルがいつものようにベンチに座っていた。側には数羽の鳩が集まっている。
「あ、マミちゃんだ!」
「ヒカル君こんにちは」
「ボク、公園の鳩さんともお話が出来るようになったんだよ!」
「良かったね。ここの鳩さんは、チャッピーとも仲良しなんだ」
「うん、さっきも鳩さんとチャッピーの話もしていたんだ」
二人で話していると、ヒカルは、
「もうすぐクリスマスだけど、ボクの家にはサンタさんが今年は来ないってお母さんから言われた……」
「そうなんだ……」
すると麻美の足元に一羽の鳩がやってきて、
「ヒカルくんの父親が今年の秋から北海道に単身赴任しているんだ。だから母親と二人で暮らしているんだ」
鳩は更につぶやいた。
「その母親もスーパーマーケットで働いているので、書き入れ時のクリスマスの時期は帰宅も遅いんだ。だからたぶんクリスマスの日も一人で過ごすんじゃないのかな?」
鳩から教えてもらった情報から総合して考えると、麻美は少し神妙な顔つきになった。
(だからヒカルくんは……)
麻美は、少しでも彼のやるせない気持ちを和らげる為に、ちょっとした物語を聞かせてあげた。
「サンタさんは、クリスマスの日の夜、遠い遠い国からはるばる海を越え山を越え、世界中の子供達にプレゼントをあげて回る事はヒカルくんも知っているよね」
「うん、知ってるよ。それがサンタさんの仕事だからね」
「……実はサンタさんって、人数が少ないから、家の無いような貧しい子供達や、親のいない子供達に向けてプレゼントを差し上げるだけで精一杯なんだよ。だから、家に住んでいて、食べるものも沢山あって、お父さんお母さんのいるヒカル君の家まではサンタさんは回れないんだよ」
ヒカルくんは麻美の話を黙って聞いている。そして大きく頷き始めた。
「だから、サンタさんは来ないからって、悲しまなくてもいいんだよ。だって、ヒカル君には帰る家もあって、家に帰るとおいしい食事が出来ていて、家には温かい部屋とお風呂があって、何よりも優しい両親がいるんだから……」
「そうだね。ボクよりも、サンタさんからプレゼントを欲しがっている子供達が世界中に沢山いるんだね。だからうちにはサンタさんは来られないんだね」
「そうよ。それに一番うれしいプレゼントは金額より真心よ。たとえ小さくても、一生懸命作った手作りのプレゼントを、心を込めて贈れば、もらった人にとっては、どんなに高価な品物よりも最高の宝物になるんだよ」
「うん。わかった。ボク、マミちゃんの話を聞いてなんだか元気になっちゃったよ」
「うふふ、ヒカルくんったら。……そうだ、クリスマスの日、私の家に来ない?」
「え、マミちゃんの家に遊びに行っていいの?」
「いいわよ。もちろんおうちの人に断ってからね」
「わかったよ、マミちゃん」
ヒカル君の弾むような声が辺りに響くと、鳩たちと一緒に公園を後にした。
麻美は、以前ラジオで聴いたクリスマスの物語と、親から教えてもらった【貧者の一灯】の言葉の意味を適当に織り交ぜた即興的な話であったが、ヒカル君を勇気付けるものとしては最適なものに仕上がった感じだ。
足元にいる鳩たちも、
「さすがはマミちゃんだね。守り神様も喜んでいらっしゃっているよ」
と口々に話してくれた。
「ありがとう。そろそろ私も帰るね。守り神様にもよろしくね」
麻美は、鳩に向かってそう言うと、公園を後にした。

麻美が帰宅するなり、部屋にいるチャッピーは早速、
「公園の鳩から話を聞いたよ。やっぱり心の優しいマミちゃんらしい良い回答だったね」
麻美は、(神仲間の情報伝達力は速いな)と思いながらも、
「だって、私のところにもサンタさんは来なかったよ。まあ、クリスマスの翌日、枕元におもちゃが入っている箱が置かれていたけど、これはサンタさんが持ってきたものではないと薄々分かっていたし」
チャッピーは、(マミちゃんって、小さいときから現実的な考えを持っていたんだ……)と苦笑しつつ、
「それで、クリスマスの日にヒカル君を呼ぶんだね。あの子、元気でかわいい子だからボクも好きさ」
「そうなんだ。後でお母さんにも話してみるよ」
夕飯後、チャッピーに、
「クリスマスの件について、お母さんに頼んだら、OKをもらえたよ」
「マミちゃんよかったね」
「けど、お母さんに、『マミって、不思議と年下の子には好かれるんだよね。せめて同級生の男の子をうちに呼んでくれるなら、お母さんもうれしいけど……』だって。私って色気が無いのかな?」
「いやいや、そこがマミちゃんのいいところさ」

そして、クリスマスの日。
午前9時、待ち合わせの公園にいつもの自転車で向かう麻美とチャッピー。
すでに公園の時計台の下に、ヒカルは立っていた。普段の半ズボン姿とは違って、上下おそろいのジャージ姿で、頭には毛糸の帽子、首にはマフラーをしている。
「マミちゃんこんにちは。今日はよろしくね!」
「あら、今日のヒカル君、なんだかスポーツスタイルだね」
「うん。お母さんが『外は木枯らしが吹いているから、暖かい格好して行って来てね』って言われたんで、これを着て、家から公園まで走ってきたんだ」
「じゃあ、今はポカポカだね」
「うん。……それじゃあ、マミちゃん家に行こうよ」
「わかったわ。じゃあ自転車に乗って」
麻美の乗る自転車も、麻美とは少し前から会話が出来るのだ。麻美がこぎ始めると、自転車の方から語り始めてきた。
「おや、今日乗っているのは、いつかの少年だね」
「そうよ、これから私の家で、二人でちょっとしたクリスマス会をするのよ」
「そうかそうか。じゃあ、僕からもささやかながら……」
と言うと、自転車の後輪から白い息のような、まるで車やバイクの排気ガスのような物を出すと、普段よりも速いスピードを出した。
「この自転車速い!」
「だって、この自転車、私の仲間だもん」
「やっぱりマミちゃんってすごいなー」
家に着いた2人と1匹。
「お邪魔します」
「お、ヒカル君、礼儀正しいね」
「うん。ボク、いい子でしょ」
「そうね。こうやって礼儀正しくなると、私のようにいろいろな動物と話せるようになれるかもね」
その話を聞いてヒカルは、多くの動物と会話が出来ると知って、少し照れていながらも目は輝いていた。
麻美の部屋に入るなり、
「うわー、きれい!」
何と、麻美の部屋でありながら雪が降ってるのだ。だけどこの雪は降っても床に積もらず、しかも触っても冷たくない。
もちろんこれはチャッピーが持つ【不思議な力】の一つで、神の啓示を受けたチャッピーが、この日のために特別にあつらえた仕掛けなのは言うまでもない。
部屋の真ん中にあるこたつの上に、ショートケーキとジュースが2つ置いてある。母が用意しておいたものだ。
(お母さんありがとう)
麻美は心の中で感謝すると、こたつにいるヒカルに向かい、少し改まって、
「ささやかなクリスマス会だけど、今日のためにヒカル君が喜んでくれるように準備したの。短い時間だけど、楽しんでいってね!」
招かれたヒカルは、
「マミちゃん、ボクのためにクリスマスをしてくれてありがとう。本当にうれしいよ!」
と照れながら、ポケットの中から小さな袋を出して、麻美に手渡した。
麻美は、袋を開けると、
「素敵なミサンガね。どうもありがとう」
それは、ヒカル手作りのミサンガだった。家にあるボタンやビーズ等を使って作ったものだ。
(きっと、あの時話した【貧者の一灯】に心を打たれて一生懸命作ってくれたんだね)麻美はそう考えると、思わず目が潤んだ。
「ヒカルくんも、少しずつ立派になってきたね」
チャッピーもなんだかうれしくなった。
麻美は机の上にある大きな紙袋を手に持つと、
「今度は私からね」と言いながら渡した。
「今日のために作ったクッキーよ。家に帰って食べてね」
「ありがとう。お母さんと一緒に食べるね」
結局何もプレゼントを用意していなかったチャッピーがふてくされるといけないと思い、
「プレゼント交換はこれまでにして、早速ケーキを食べましょうね」
「うん」
それから、二人でケーキを食べたり、歌を歌ったり、チャッピーはお得意のひまわりの種の【曲食い】を披露するなど、いつもと違う雰囲気の部屋で、楽しいひとときを過ごした。
時計の針は正午を指した。
「そろそろお昼だからクリスマス会は終わりだね……」
「そうだね。ボク、お昼ご飯を食べに家に帰らないといけないから……今日はありがとう」
「私も楽しかったわ。じゃあ、公園まで送るね」
「いいよ、この辺りの道はボクは大体分かるから」
玄関で帽子とマフラーをつけると、ヒカルは、
「クリスマス会楽しかったよ。また公園で会おうね!」
と元気な声で麻美とチャッピーに向かって言うと、親の待つ家に向かったヒカル。
「ヒカル君、とても喜んでたね」
とチャッピー。麻美も、
「チャッピーのひまわりの種の食べっぷりは見事だったよ」
「まあ、ボクにとっては人間が食べるケーキもクッキーも食べられないから、ひまわりの種が一番のご馳走さ!」
「じゃあ、チャッピーのクリスマスプレゼントは、ひまわりの種一袋で決まりね」
「ありがとう。これでひまわりの種の中にもぐりながら冬眠が出来そうだから、ボク、うれしいよ」
「……それって喜んでるの?ひがんでるの?まあ、いいか。……昼食食べたらホームセンターに買いに行こうっと」
雪が降る部屋の中で談笑する麻美とチャッピー。
今年は今までで最高のクリスマスを過ごせた麻美であった。


posted by K.S at 23:46| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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